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2015年4月、電気情報工学科がスタートしました

専攻科をお勧めします

松江高専には、卒業生を対象とした2年間の専攻科があります。電気工学科からは毎年、6~10名の学生が専攻科へと進学しています。教員としては専攻科への進学をお勧めします。

専攻科へ進学するメリットデメリットを以下に議論します。RIMG1261

メリット 1.大学卒の学歴・給与

多くのメーカでは技術職として大学院卒、大学卒、高専卒を採用します。日本全体として考えれば、技術系新入社員の約35%が大学院卒、55%が大学卒であり、高専卒はわずか10%、しかも、学歴では下位に位置します。このためスタートラインにおける企業内での職種選択の幅が狭まり、さらに、その後の業務においても後塵を拝する状況に置かれがちです。

また、日本の社会では学歴によって収入に差が生じます。厚生労働省が毎年、賃金構造基本統計調査を行っていますが、その中に学歴による平均賃金が示されています(平成24年度版)。大学・大学院卒と比較して高専・短大卒は、約20%平均賃金は低くなっています(短大・高専卒となっていますが、男性は高専卒が大部分です)。残念ながらこの傾向は、これからも続くと考えられます。

現在、業務のグローバル化が進み、海外企業との交渉も日々増えています。ホワイトカラーとブルーカラーを厳然と区別する風土に根付く欧米企業、および欧米企業の影響の強い発展途上国企業との折衝においては、その人物が学位(大学卒である学士、大学院修了である修士、博士)を持つかどうかが重視されます。OECDによる高等教育政策レビューにおいて高専制度は高い評価を得ましたが、高専は日本独自のシステムであり、6・3・5の14年間の教育では国際的には大学と同等には評価されません。

高専教員として、実力のある卒業生が学歴のために活躍の範囲が狭められ、そして評価においても高くない現実を極めて残念に思います。俗に「学歴はあっても荷物にならない」と言われますが、「学歴がなければ損をすることがある」のが現実です。卒業生に、社会人のスタートラインに並ぶとき、少しでも有利なポジションに立ってもらいたいと考えます。

メリット 2.エンジニアとしての実力IMG 1687

技術は日々革新するだけでなく、社会への影響もますます大きなものとなっています。それとともに、エンジニア教育への企業や社会からの要求も増え続けています。教員が20年、30年前に受けた教育は言うに及ばず、10年前の教育と比較しても、技術者としての倫理、デザイン(設計)能力、交渉力(外国語を含む)、さらには省エネルギーから持続可能性へ、コンピュータからネットワークへと、エンジニアリング教育の内容も増え続けています。残念ながら高専5年間の教育では、エンジニアとしての基礎の基礎を学ぶのが精一杯です。

とくに近年では、エンジニアに“社会や顧客からのニーズを適切に把握し、実現可能な解決案を提案する”能力、すなわちエンジニアリングデザイン能力が求められています。松江高専専攻科では、このエンジニアリングデザイン能力に焦点を合わせたユニークで先進的な教育を行っています。

さらにデザイン能力を鍛えるためには、継続して課題に取り組むことが効果的です。専攻科では2年間の専攻科研究に取り組むことができます。これに対して大学編入では3年生としての授業を受け、4年生になってから1年間の卒業研究があるだけです。この点でも専攻科は大学より有利となります。

エンジニアとしての実力を高めるためにこそ、専攻科をお奨めします。

メリット 3.国立大学の約半分の学費

学士の学位を得るまでの2年間の学費は高専本科と同じであり、国立大学の約半分です。しかし教育の質は決して劣るものではありませんR0011055。大学は研究を指向しますが、高専および専攻科は、在学生の教育をより重視しています。

メリット 4.連続したカリキュラム

高専4・5年生では多くの専門科目を勉強します。このため大学3年に編入したときに、内容によっては履修を繰り返すことになります。これに比べ専攻科への進学は、高専からの教育内容が連続されるため、重複や欠落のない一貫したカリキュラムとして学べます。さらに高専5年生からの研究を連続して実施できます。研究能力を養うことは、卒業後の企業においての開発能力にもつながります。

デメリット 1.少ない予算・貧弱な研究設備

残念ながら高専には歴史的蓄積がありません。予算規模は小さく、研究設備も比較になりません。さらにはスタッフの数も旧制帝大と比べると二桁減です。かつて某大臣が「世界一でなくて、二番では何でいけないの?」と宣いましたが、研究の世界において設備の優劣は致命的です。たとえば光学顕微鏡ではいくら頑張ったとしても、遙かに高価な電子顕微鏡がなければ、ウイルスを見つけることはできません。パソコンでは1ヶ月かかってもできない計算も、スーパーコンピュータがあれば数分もかかりません。

最先端研究を指向するのであれば、国内ならば旧制帝大です。設備もですが、スタッフのつながりも違います。入るのは難しいですが・・・。

デメリット 2.松江は田舎であること

若いうちにこそ、いろいろな環境に触れることが刺激にもなり触発される機会となります。が、田舎ではどうしても多くありません。文化に触れる機会も英語を必用とする場面(松江では英語で道を尋ねられることすらありません)も多くなく、物理的にも世界と近くありません。 

以上のデメリットはありますが、研究職を指向して旧制帝大に編入するのでなければ、言い換えれば職業としてのエンジニアをめざすのであれば、専攻科をいちばんにお勧めします。

もうひと言

 最後に、メリットでもデメリットでもありませんが「大学は高専よりも就職が悪い」から進学しない方が良いとの誤った意見があります。たとえば文部科学省平成24年度就職内定状況調査(2月1日現在)では高専99.2%に対し大学81.7%とあり、いかにも大学が悪いように見えます。しかしこの数字も、国公立大学理系に限れば89.0%です。理系には工学部と理学部があります(医歯薬系は国家試験がありますので状況が異なります)。この調査では明らかではありませんが、松江高専からの編入学者のほとんどを占める工学部は、理学部よりも高い内定率となります。

教員としての経験からも、高専卒で就職できる人物であれば、大学卒となったときに就職できない可能性ありません。また、就職できる企業の範囲も広がります。製造部門では高専卒を採用するけれども本社では採用しない企業もあります。そして入社後の仕事の幅も広がります。「高専で就職する方が有利」との意見は間違っている断言します。

 

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